日本は、国土の7割が森林で、自然豊かで治安の良い国というイメージがある一方、自然災害の多い国としても注目されています。今年も大きな地震や雨による災害がありました。

このコラムを読んでいる皆さん、特にアレルギー疾患をもつ皆さんは、その準備ができていますか?

「行政がなんとかしてくれるはず…だからあまり準備していない」という方は、すぐに準備に取りかかりましょう。自分で守らなければ、災害時に非常に困るのです。

2011年東日本大震災や2016年の熊本地震の際に、食物アレルギーのお子さんをもつ複数のお母様から聞いたエピソードです。中には、泣きながらお電話をいただくこともありました。

<災害時に困った声>

食物アレルギーがあるので、炊き出しをしている担当者に「原材料を教えて下さい」と伝えたら「こんな状況の中で伝える余裕なんてないよ。そんな細かいこと聞くな」と怒られてしまいました。
配給があって並んでいたところ、食物アレルギーのため子どもが食べられないものをもらわずにいると、見ず知らずの避難者から「わがままいっているんじゃないよ」と言われてショックでした。
避難所に食物アレルギー対応食品がすぐに届かず、自宅に残っていたお米で作った具材を入れないおにぎりとお湯で、届くまで耐えました。
大きな避難所から離れていて、さらに道が寸断され、食物アレルギー対応食品が届かず、非常に心細かった。自宅に備蓄していませんでした。

ぜんそくやアトピー性皮膚炎の悪化も

東日本大震災で被災した方の調査では、間違ってアレルゲンの入った食品を摂取し、じんましんやアナフィラキシーショックなどの症状が出たケースもあったそうです。また、食物アレルギーだけでなく、アレルギー疾患のアトピー性皮膚炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎の疾患も悪化してしまう例もありました。

食物アレルギー対応は、一般の方よりも対応が遅れがちです。食物アレルギー児の栄養支援は、災害発生から4時間以内、または72時間以内から始められるべきです。しかし、現実には容易ではありません。

自治体によって異なりますが、一般の備蓄食品や飲料物が配布されても、実際に食物アレルギー児に対応するための備蓄は、すぐには調達が難しいと考えておいた方がよいでしょう。

備蓄食品の準備、主治医に確認

では、今なにをすべきでしょうか。

(1)災害時でも食べられる食品を用意しましょう(年1、2回、賞味期限が切れていないか確認しておきましょう)。

(2)主治医に、自分が食べられるアレルゲンの量を確認しておきましょう(調味料に含まれる量は食べても問題ないか、アレルゲンを含んだ料理を作った時に使用した、同じ調理器具を使っても良いかなど)。

(3)災害時に、保護者が仕事などでそばにいないことも想定し、親戚や近所の方にアレルギーがあること、どんな商品が食べられるかということを伝えておきましょう。

(4)ぜんそくをもつ方は、ホコリや粉塵で悪化させてしまうこともあるため、日頃からマスクを持ち歩きましょう。

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