志賀正啓監督(35)が就任した2017年以降、神奈川県大会ベスト8に4度進出するなど急成長中の立花学園が、「高校野球×IOT(インターネット活用)」でさらなる進化を遂げている。今秋のドラフトではエースの永島田輝斗(きらと=3年)がロッテ育成枠3位指名を受け、同校3人目のプロ野球選手が誕生した。この1年は選手だけでなく、女子マネージャーも従来の仕事に加えて積極的なSNS戦略で「愛されるチームづくり」に尽力。コロナ禍の休校で中断していた補食も再開し、悲願の甲子園出場に向けて部員91人が一丸となっている。

おにぎり100個は5種類の味で大人気

女子マネージャーの藤平純海さん(2年)、小島みどりさん(1年)が寮の食堂で補食のおにぎりを約100個作っていた。平日は午後8時まで練習を行うため、帰宅が9時以降になる選手もいる。ケガ予防と体重増量を目指し、練習の合間や練習後に1人1、2個のおにぎりを食べることが習慣になっている。

「強豪校・東海大相模の平均体重が74.1キロに対して、立花学園2年生の平均は70.5キロ。お米の補食はエネルギー源としても優秀であるだけでなく、集中力が増したり、疲れにくくなったりする。脳にとっても大事な栄養素なんです」と藤平さんは説明する。

「たくさん食べて欲しいです!」と話す(左から)マネージャーの小島さんと藤平さん
「たくさん食べて欲しいです!」と話す(左から)マネージャーの小島さんと藤平さん

味は飽きがこないようにしょうゆ、ゆかり、ごま塩、ワカメ、サケの5種類。名札付きできれいに並べられたおにぎりには「しょうゆ味」が1番人気だ。

型を使わず、1つずつ手で握っているのに形が同じ。「感覚で慣れました」と藤平さん
型を使わず、1つずつ手で握っているのに形が同じ。「感覚で慣れました」と藤平さん

戸澤漱司選手(1年)は「入学時から4キロ増の69キロまで体重が増えました。この冬に補食とトレーニングで70キロの大台まで増やしたい」と言った後、「ごちそうさま。ありがとう」とマネージャーたちに感謝を伝え、再び練習に戻っていった。

初めての冬トレを補食とともに頑張る1年の(左から)及川昭太、笹尾駿介、浜崎絆斗、戸澤漱司の各選手
初めての冬トレを補食とともに頑張る1年の(左から)及川昭太、笹尾駿介、浜崎絆斗、戸澤漱司の各選手

ブログでチーム状況や栄養ポイント配信

立花学園の女子マネはSNS発信にも力を入れている。1つ目は、野球部ホームページ内のチームブログ「ドキドキマネのワクワクblog」の更新だ。

今年で3年目となるブログに、選手紹介、チームの近況のほか、風邪予防のための食事や栄養のポイント、目の疲労回復法など、独自で調べた情報を掲載している。10月8日には小島さん考案の疲労回復メニュー「ささみの黒酢炒め」も公開した。今では吉田大育助監督(29)が手直ししなくてもいいほど、2人の文章力は上達した。

小島マネ特製の「ささみの黒酢炒め」
小島マネ特製の「ささみの黒酢炒め」

声で活動報告「ドキマネラジオ」

もう1つは、音声配信アプリ「スタンドエフエム」を使った“ラジオ配信”だ。スマホ1つでラジオ番組が作れる音声SNSのひとつで、1年間で配信数は約90回になる。藤平さんは「最初は見えない相手に言葉を伝える難しさがありましたが、グラウンドでは見られない選手の素顔も見られるいい機会になっています」とやりがいを感じている様子だ。

ラジオ配信を週2回(火・土)実施。1年続けてきた藤平さんは手慣れた手つきでスイスイと音源を編集する
ラジオ配信を週2回(火・土)実施。1年続けてきた藤平さんは手慣れた手つきでスイスイと音源を編集する

コロナ禍で、地元のファンや保護者がグラウンドに入れない日々が続いた。藤平さんは「こんなご時世で球場に観戦に来ていただけない方が多いと思います。週2回、『声』でチームを紹介していますので、私たちの頑張っている様子を知っていただけたらうれしいです」とメッセージを送った。

ツイッターで進学・入部を決める

立花学園のSNSの取り組みで進路を決める学生もいる。「SNSの力は偉大です」と断言する小島さんもその1人だ。中学3年生だった昨年、コロナ禍で学校見学が制限され、進路選びに迷っていたところ、立花学園のTwitter(ツイッター)で野球部マネージャーの取り組みを知り、入学を決めた。

親からは「ツイッターで進路を決めるの?」と驚かれたが、何度も説得し、実際に学校を見学して決断した。12年間やっていた新体操から野球へ、選手からマネージャーへと立場を変え、約1時間半かけて通学している。「私のように、ツイッターやブログやラジオを聞いて立花学園を知り、こういう取り組みを自分もやってみたいなと思う中学生がいるはず。そういう人に情報を届けるつもりで頑張っています」と熱弁した。

2年生投手の(左から)中本裕、矢部蓮人はともに体重81キロ。補食で増量し球速アップを狙う
2年生投手の(左から)中本裕、矢部蓮人はともに体重81キロ。補食で増量し球速アップを狙う

相手校からツイッター運営について質問も

部のツイッター「立花学園高校野球部公式アカウント」は吉田助監督が管理し、フォロワー数は2年間で3700を突破した。ほぼ毎日更新しており、「最近は、相手校の監督にツイッターの運営について質問されることが多くなりました」と吉田助監督は驚いている。

ツイッターを「高校野球の立ち読み」と表現する志賀監督は「SNSで知名度も上がり、昨年は大阪からの2名を含む59人が入部を希望してきました(現52人)。都市部並みの大所帯になった今、第2ステージは結果にこだわっていきます」。

最新機器や器具も存分に活用

「金太郎」のふるさととして有名な足柄山のふもとに練習場を構える立花学園。球の回転数やホップ数を測れるラプソードや、センサーでスイングの分析ができるブラストモーションという最新機器や最新器具を使って、個々の能力を可視化。練習を効率化し、結果につなげていこうと燃えている。

寮の掲示板には月ごとの個人体重を記録
寮の掲示板には月ごとの個人体重を記録

今年の夏の神奈川大会では5回戦で延長12回の末、日大藤沢に4-5で敗れ、8強入りはならなかった。しかし永島田投手を含む5人の投手が140キロ越えを実現させるなど、大きな成果も残した。テクノロジーを使ったSNS戦略と、技術向上。「ワクワク大作戦!2ndステージ」に立った立花学園は、高校野球の新しい価値を模索し、全国に発信していく。【樫本ゆき】

小島マネ特製の「疲労回復!ささみの黒酢炒め」

小島マネ特製の「ささみの黒酢炒め」
小島マネ特製の「ささみの黒酢炒め」

小島マネに「疲労回復!ささみの黒酢炒め」の作り方とコツを教えてもらいました。

<作り方>
①ささみは筋をとり縦半分に切り、塩コショウ、酒で下味をつける
②黒酢あんを作る(黒酢、しょうゆ、砂糖、水は大さじ3、中華スープの素大さじ2、片栗粉大さじ1)
③野菜は全て一口大にカット
④鍋に湯を沸かし、塩とゴマ油を加え、③をさっとゆでる
⑤ささみに片栗粉をまぶし両面を焼く。③を加えて炒め、一旦別皿にとる
⑥②を木ベラで混ぜながらとろみがつくまで加熱。そこに⑤を戻し入れ、ゴマ油を入れ完成

<コツ>
・具材を大きめに切り、食べ応えアップ!
・油で揚げないことでヘルシーに!

<ひとこと>
以前ブログでささみを紹介したことがあり、それを使ってなにか作れないかと思い、家にあるもので作ってみました。比較的簡単にできる料理なので、皆さんもぜひ作ってみてください。

立花学園HP(https://wakuwakugakuen.amebaownd.com/