学生の「自主性」を促す練習計画書

青学大では、目標とする大会に向けた練習の計画書を1カ月前、時には2カ月前から選手に渡している。大会に向けてどう努力していくか、自分で考えるように仕向けている。そこには原監督が常々、抱いていた考えがある。

原監督 よく学生に対して「自主性」と言われますが、果たして指導者側はそのキーワードの指導をしているのかと問いかけたい。学生に、高校時代のその日の練習メニューをいつ知ったかというデータを取ると、7割以上はその日にならないと分からなかったと答えました。それでターゲットの試合に向けて自分自身で到達できるかというと、できませんよ。

だから、青学大では練習計画書を選手に渡して、選手に「自主性」を促す仕組みをつくっている。

原監督 こちらで設定タイムを決めるのは週3回程度。残り3回は自分たちで強度や距離を決めて走る。そうすることでターゲットに合わせる力を自分でつける。それが青学大の基本コンセプトです。

元気いっぱいの原監督
元気いっぱいの原監督

「生きる力を学ぶ」と書いて「学生」

4年間、このプログラムを経験してきた神林主将は振り返る。

神林主将 高校までは自分で考えて動くより、与えられたものをただこなしていくだけだった。大学に入ると、全てのことを自分で考えて取り組まなければいけない環境下にいるので、自分の考えを持つことが当たり前にできるようになりました。青学大陸上部の強さはここにあるんじゃないかと思っています。

こうして得た力は、卒業して社会に出てからも必ず生きる。2004年に青学大監督に就任するまで、中国電力で10年間サラリーマン生活を送り、約1000万円もする企業用の省エネ空調機を売りまくったという自称「伝説の営業マン」ならではの育成法。サラリーマン時代に培った考えが根底にある。

原監督 選手はモルモットではないので、大学生以降は自ら生きる力を学んでもらいたい。高校までは生徒なんです。徒弟制。「師匠に従う」と書く。でも、学生は「生きる力を学ぶ」と書くんです。高校時代は言われたままやらないといけない部分がありますが、大学生や社会人になると、イエスマンのごとく上から言われたことを聞いているだけでは、世の中の未来は開けません。

イベントの最後は「ごちそうさまでした」
イベントの最後は「ごちそうさまでした」

ビフィズス菌と乳酸菌の違いは“住処”

この日のイベントのテーマは「大腸活」。大腸はこれまで、主に不要な物を便として排せつする器官としてしか知られていなかった。

しかし、最近の研究で代謝や脳神経などのほか、免疫の鍵を握る重要な役割が認知されてきた。

大腸に住んでいる代表的な善玉菌は「ビフィズス菌」と「酪酸菌」。これらは水溶性の食物繊維を好むため、根菜や海藻類で活性化させることが良いという。

ちなみに、善玉菌として有名な「乳酸菌」は大腸にはおらず、主に小腸に住んでいる。

こうしたことも勉強になった今回のオンラインイベント。原監督は「腸を整えることがアスリートのパフォーマンス向上の第1歩になるのだと、あらためて感じました。腸が整わないと、箱根駅伝6度目の優勝はありません。残り5カ月、大腸活大作戦で頑張ります」と締めた。【アスレシピ編集部】