阪神川藤幸三OB会長(70)が9日、ドラフト2位の履正社・井上広大外野手(18)に「大食い指令」を出した。

鳴尾浜で2日目の新人合同自主トレを視察。現在体重98キロで、焼き肉店の注文が追いつかないなど、履正社NO・1の大食い伝説を持つ井上だが、川藤氏の教えは“もっと食え”だ。

引き揚げる井上(左)を見つめる川藤阪神OB会長(撮影・上田博志)
引き揚げる井上(左)を見つめる川藤阪神OB会長(撮影・上田博志)

右足首のねんざで別メニューの井上があいさつに訪れると、川藤氏は言った。「焦ってもしゃーない。しっかり治して」。続けて「(食事の)量は食べる方か?」と投げかけ、「俺は技術より、どれだけメシ食うか楽しみにしとるわ」と頬を緩ませた。スカウトからも大食い情報を収集すると、再び笑顔になった。

「2位の子は、井川以上に食うらしいから楽しみやないかい。100キロでも200キロでも(なるくらいに食べれば)ええんや。その代わり、それ以上のことで体を絞ればええ」

井川氏は星野元監督が連れて行った寿司店で100貫を平らげた伝説が残る大食漢。だがたゆまぬトレーニングで食べた分だけ鍛え上げて馬力をつけ、エースとして2度の優勝に貢献した。川藤氏はプロで生き抜くには「一番大事なのは体力」と力を込める。2軍発進となる2月の高知・安芸キャンプも食トレの場。「四国行って、大いに食って飲んで。飲めと言っても、今の子は水飲んでやなあ」と川藤節をさく裂させた。

ベンチの川藤幸三阪神OB会長に声を掛けられる井上広大。左は田中秀太スカウト(撮影・上田博志)
ベンチの川藤幸三阪神OB会長に声を掛けられる井上広大。左は田中秀太スカウト(撮影・上田博志)

井上は「声をかけてくださって、期待されていると感じた」と感謝。「新人の中では断トツ食べます」と自信満々で、目標は「おかわり君」こと西武・中村剛也だ。同じ大阪・大東市出身。「自分の持ち味は長打力で、中村選手も長打力。負けないようにしたい」。過去6度の本塁打王に輝いた先輩へ闘志を燃やし「虎のおかわり君」を目指す。

高校時代は自宅で何回もおかわりするのが面倒で、調理器具の銀ボールにご飯を詰め込んで食べていたとか。OB会長お墨付きの食トレで、さらに爆裂的なパワーをつける。【只松憲】

<川藤氏の珍指令>

◆熱くなれ 11年11月、秋季安芸キャンプで和田新監督を激励。「スマートな半面、熱いものを持っている。遠慮するなら大将せんかったらええんや。誰に遠慮する必要あるんや。カッカしたチームを作ってくれ」と猛烈にハッパ。和田監督も「そういうイメージかもしれないけど、ひょう変することもあるよ」とにやり。
◆若手何しとる 16年1月、金本新監督誕生に話題が集中したことに「監督の話題ばかりやないか。選手や! いつまで監督の話をしているんや、オレらの方を向かんかい、となってくれ」とナインを叱咤(しった)。自身の現役時代を引き合いに「いつまでベテランにやらすんや、と思っていた。今の子は態度に出さないけど、出せばいいんよ」とアピールを求めた。
◆酒は飲め飲め 17年1月、新人合同自主トレを視察してぶち上げた。「お前ら、酒は飲めるんか? 1升飲めるんか? プロに入ったら、酒くらい飲めるようになれ!」。さらに「プロに入って、どれだけ体を大きくできるかや。ワシは大きくならんかった。態度だけ大きかった」とユーモアも交えて笑わせた。

(2020年1月10日、ニッカンスポーツ・コム掲載)