27日開幕の全国高校ラグビー大会に20大会連続30度目の出場となる東福岡(福岡)が、3大会ぶりの優勝を狙う。昨年は3位にとどまったが、今年は伝統の継続ラグビーに加え、ディフェンス力を底上げしてきた。

練習の最後はFWも含めた選手全員のランメニューで締めくくる
練習の最後はFWも含めた選手全員のランメニューで締めくくる

4月の全国選抜大会で桐蔭学園(神奈川)に10トライを奪われ、21-67で大敗。これを教訓とし、コンタクト練習を週1回から2~3回に増やし、アタック7:ディフェンス3だった割合をディフェンス7:アタック3と逆転させ、弱点克服に努めてきた。11月の福岡県大会では、失点は3回戦(香椎)の7点のみで、準々決勝から3試合連続完封。春以降、体作りから意識を変え、食とトレーニングでそれぞれのベスト体重にたどり着いた結果が表れた。

グラウンド横にある専用ウエート場。朝は7時40分から約1時間のアーリーワークが日課になっている
グラウンド横にある専用ウエート場。朝は7時40分から約1時間のアーリーワークが日課になっている

今年のチームは、FW平均体重が93.1キロ。「量を食べて増やす」という一般的な増量法を行っていない。

藤田雄一郎監督(47)は「箸本龍雅(LO、明大3年)たちがいた時代は目標数値を決め、FW平均体重を100キロまで増やすやり方をしていました。しかし実際に戦ってみると、モールは押されていたし、スピードも落ちてしまった。体重は自己管理で決めるもの。ベストパフォーマンスができる体重を自分でコントロールしていこうという考えに変えたのです」と説明。「重い=強い」の先入観を取り除き、「花園は自分のベスト体重で臨む」という考えに転換したのだ。選手たちも、ノルマがないことで自分の体と正直に向き合い、自分に合った増量法で体重管理をするようになった。すると、順調に体重が増えていったという。

選抜敗退後、ディフェンス面での強化を課題に挙げ弱点克服に時間を注いできた藤田監督(右)
選抜敗退後、ディフェンス面での強化を課題に挙げ弱点克服に時間を注いできた藤田監督(右)

ノルマや強制なし、自分で体重管理

<東福岡の主なFW選手の体重移行>(入学時→現在)

PR川崎太雅(3年、171センチ)95→105キロ
LO森山雄太(3年、182センチ)73キロ→93キロ
FL永嶋 仁(3年、178センチ)76キロ→84キロ
FL井上風雅(3年、168センチ)82キロ→88キロ

最前列を担う川崎はラックやモールでもフィジカルの強さを発揮している
最前列を担う川崎はラックやモールでもフィジカルの強さを発揮している

スクラムの要、左プロップの川崎は補食とトレーニングで体重を増やした。「肉とご飯でまずマックス105キロまで体重を増やしました。そこからウエートトレーニングを強化して筋力に変えていった。下半身を鍛えると体重が増えてくれるのでスクワットを重視しました。負荷は170キロで上げています」。

入学時から体重が20キロ増え、コンタクトの強さが増した森山
入学時から体重が20キロ増え、コンタクトの強さが増した森山

「ラインブレイクできるFW」と藤田監督が高く評価しているのが森山と井上だ。森山は入学時から20キロも増量に成功し、高さを生かした空中戦が武器。「7月に膝をケガして、その時に太り過ぎないようにバランスよく栄養をとっていました。嫌いだったウエートも(ケガに影響しない)上半身を中心に続けていたら、脂肪ではなく筋力がつきました」。

井上はチーム1のタックラー。破壊力あるプレーで相手の勢いを封じる
井上はチーム1のタックラー。破壊力あるプレーで相手の勢いを封じる

低く強いタックルでチームに勢いをつける井上は168センチでベンチプレス135キロを上げるパワーの持ち主。「夕食時に毎日ご飯を2合食べ、高2から朝練(ウエート)を始めたら体が大きくなって88キロに。もっと増やすことはできるけど、これ以上増やすとスタミナとスピードが落ちるので、花園はこの状態で行きます」とこれまでの経験を踏まえて準備している。

中学時代、草ヶ江ラグビースクールで活躍した永嶋。当時70キロ前半だった体重はトレーニングと食事で大きく成長した
中学時代、草ヶ江ラグビースクールで活躍した永嶋。当時70キロ前半だった体重はトレーニングと食事で大きく成長した

ブレイクダウンに定評のある永嶋は「走れる体重がベスト体重」と言い切る。「あと1キロ増やして花園に臨みたい。夕食のとき2杯目を必ず卵かけご飯にして食べるようにしています」と体重コントロールのコツを語った。

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