アメリカでは、人口の約6%がビーガン(完全菜食主義者)と言われ、動物性タンパク質や乳製品を摂らない人が年々増えています。その流れはいまやアスリートにも及び、屈強な肉体で知られるナショナル・プロフットボールリーグ(NFL)の選手の中にも、植物性由来のタンパク質しかとらない選手が増えているようです。

体重100キロ超の選手同士が激しくぶつかり合うNFLでは、体作りのために赤身肉など良質な動物性タンパク質が必要不可欠だと思われてきました。しかし最近、WRアンドレ・パットン(ロサンゼルス・チャージャーズ)やWRグリフ・ホエーラン(インディアナ・コルツ)、DEダグアン・ジョーンズ(テネシー・タイタンズ)、QBコリン・キャパニック(元サンフランシスコ・49ers)らが次々と、ビーガンであることを公にしています。

「体力の回復が早くなった」

ビーガンになった理由は様々ですが、共通しているのは「ビーガン食に切り替えてからケガの治りが良くなり、体力の回復が早くなった」と話していること。NFL最強の現役選手として知られるニューイングランド・ペイトリオッツのQBトム・ブレイディも完全なビーガンではないものの、食事の80%は野菜や植物性タンパク質中心で、残り20%は脂肪分の少ない赤身のステーキ肉や鶏肉、天然のサーモンなどをとっています。30代で引退する選手が多いNFLにおいて、40歳を過ぎても第一線で活躍する強さの秘訣は、植物性タンパク質を中心とした食事とも言われています。

栄養の偏りを危惧する声も

米スポーツ医学会は2010年に「ビーガン食は筋肉の炎症や体内で起こるあらゆる炎症やアレルギー反応をコントロールすることができ、免疫向上や慢性的な炎症の予防につながる」との論文を発表していますが、実際にパフォーマンス向上に良い影響を及ぼしていることを証明する臨床データーはなく、栄養の偏りを危惧する声があるのも事実です。

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