アメリカで、チキン専門ファストフード店同士のチキンサンドを巡る前代未聞の「チキン戦争」が勃発しています。

発端は1カ月ほど前。ルイジアナ州ニューオリンズ発の「ポパイズ・ルイジアナ・キッチン」が、フライドチキンを丸いブリオッシュパンに挟んだサンドイッチを「過去30年で最高の新商品」と銘打って発売しました。これに対し、同じくブリオッシュパンにフライドチキンを挟んだサンドイッチを主力商品とするジョージア州アトランタ発の「チックフィレイ」が、「自分たちが元祖」とSNSで主張。すると今度は、ポパイズが「おいしいの?」と応戦するなど、挑発的なツイートのやり取りが始まりました。

「自分たちが元祖」と主張するチックフィレイのチキンサンド
「自分たちが元祖」と主張するチックフィレイのチキンサンド

それを見ていた全米の消費者は、新商品を求めてポパイズに殺到。完売状態が続いてしまい、食べられないことに腹を立てた客が、店員に銃を向ける事件にまで発展しました。また別の男性は、2週間以上、全店舗で売り切れ状態が続いていることに対し、「毎日商品を求めて車を走らせ、再来店を何度も強いられもまだ買えない」として、「虚偽広告」として損害倍を求める訴えも起こしています。

予想外の大反響で商品の提供が追いつかないポパイズは、「Bring Your Own Bun(自分でバンを持ってきて)」の頭文字を取ったBYOBキャンペーンを実施。「チキンサンドを食べたい人は単品のフライドチキンを購入して自分で作って」と呼びかける苦肉の策を打ち出しました。

この状況を見て、他のファストフードチェーン店も放っておくはずはありません。マクドナルドは急きょ、「スパイシーBBQチキンサンド」を新商品として投入。ケンタッキーフライドチキンも甘いグレイズドーナツをバンの代わりに見立て、フライドチキンを挟んだ「フライドチキン&ドーナツ」を発売すると発表。業界全体を巻き込んだ壮絶なバトルに発展しています。

ソウルフードである「チキン」をかけた負けられない戦い。この狂騒曲はまだまだ続きそうです。

【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】