選手の意識を高めるため数々の工夫
自分にとって何が必要か、選手がビビッドに反応するよう、山田さんは日々、工夫をこらしている。練習前後に体重を量り、選手各自で記入させて、体重と体調を管理。栄養ミーティングでも、栄養価や効果を「食卓にもポジションがある」とラグビーに例えて解説し、浸透させている。
今年度は、HO武井日向主将(4年=国学院栃木)の意見を取り入れ、栄養クイズを食堂の壁にも貼って、目につくようにした。2年前からは夏合宿で、これらの「総合テスト」も実施。4年生ら満点の選手もいる反面、「珍回答も出て、すごく盛り上がる」と、楽しみながら知識定着も図っている。
毎年、100人近い選手全員の嗜好やアレルギーなども把握。必要があれば、代用食も考える。週2、3日は練習を見て、トレーニング強度や選手の状態を確認し、メニューに反映させる。「規定のタイム内に走れるようになってきたじゃない」「体重増えてきたね」などとコミュニケーションをとりながら、個々の食事量の調整を行っている。
3食+補食2回、空腹の時間を作らない
選手の1日の摂取エネルギーの目標量は、FWが4500~5800kcal、BKは4000~5000kcal。ただし、現チームにはBKに180センチ以上の選手が多いため、基本は体重に合わせて目標量を設定している。一般男性の約2倍のエネルギー量を摂るため、食堂では3食に加え、午後4時と10時ごろにご飯とみそ汁の補食が用意されている。
<明大ラグビー部の食事と補食>
(午前)
5時半~6時 バナナなど
8時~9時 朝食
(午後)
0時 昼食
4時 補食
6時~9時半 夕食
9時半~11時 夜食(補食)
体重を増やす、キープするために、起きている時間は約3時間ごとに食事をとり、空腹の時間を作らないよう徹底させる。また、選手が体作りにおいて、何にフォーカスすればいいかを示すため、田中澄憲監督(43)の下、藤野健太S&Cコーチ(30)やコーチングスタッフと連携。3カ月ごとに測定する体組成・筋力の結果を基に3グループに分け、それに基づいて栄養指導をしている。
<グループ分け>
●Aグループ=体重は十分・筋力フォーカス
●Bグループ=体重は十分・シェイプアップ
●Cグループ=増量必須
選手の多くは筋力アップ・体脂肪ダウン
大学生のラグビー選手の多くはAグループ、つまり、体重は十分だが、体脂肪量(率)が高い選手が大半だという。タンパク質と炭水化物に重きを置いた食事を1日5回するとともに、ウエートトレーニングで筋力を強化。高校時代に筋トレをしていなかった下級生も、入寮してから食事とトレーニングで劇的に体が変わっていく。
AグループにいるLO辻惇朗選手(4年=常翔学園)は、体重が減りやすい体質のため、ご飯は朝550g、夜も500gと炭水化物をしっかり摂り、タンパク質を意識して目玉焼きは3個とっていた。入学から10キロ増えたが、体脂肪率は16%と筋肉量でアップ。「体に気を使えるようになったし、体調不良ということがないですね」と笑顔もさわやかだ。
Bグループにいるのは、寮長も務めるCTB射場大輔選手(4年=常翔学園)。筋肉量が多いため、オフなどで運動量が減ると太りやすいという。朝食を見せてもらうと、目立っていたのが、お皿山盛りのサラダ。ベジタブルファーストで、ご飯は200gと控えめだ。「昨年も今年も、オフで太ってしまった。通常、体脂肪率15%のところ21%まで増えていたので、今は減量中。3週間で3キロ落としました」。補食も夕方にプロテインを飲むだけにとどめているという射場選手に対し、山田さんは「体重も筋量も十分という、大学ラグビーではレベルの高い身体の反面、太りやすい。でも、しっかりやっていますね」と早期のコンディション回復を期待している。