ケニア出身の23歳オールドルーキーが、箱根駅伝の主役になる。

留学生として入学した札幌山の手高時代に総体5000メートルで3年連続2位のチャールズ・ドゥングが今春、日大に入学した。高校卒業後は実業団で4年間活躍も、指導者になる夢も見据えて大学に進学。箱根駅伝で総合優勝12度を誇る日大だが、ここ10年は出場8度で2桁順位7度と振るわない。北国育ちの外国人ランナーが古豪復活を誓う。

日大の寮の前でガッツポーズするドゥング(撮影・浅水友輝)
日大の寮の前でガッツポーズするドゥング(撮影・浅水友輝)

23歳の新1年生ドゥングが、箱根駅伝に向けて日大で始動した。「良いチームをつくって、箱根駅伝優勝を目指して頑張りたい」。トラック、ロードともに自己記録はチームNO.1とあって、練習でも先頭でチームを引っ張っている。5月の関東学生対抗選手権では男子1部のハーフマラソンで優勝、1万メートルでも2位と、すでに存在感を見せている。

ケニア出身で来日8年目を迎えた。札幌山の手高時代は総体5000メートルで3年連続2位。全国駅伝でも2、3年時ともに区間3位と、安定した成績を残した。実業団の小森コーポレーションでも5000メートル、1万メートル、ハーフマラソンで自己記録を更新したが、ニューイヤー駅伝には出場できず。目標とする指導者になるプランと、来日初年度から「すごく良い雰囲気。走ってみたい」と抱いていた箱根路への思いが重なり、日大スポーツ科学部の門をたたいた。

日大のクロスカントリーコースで練習するドゥング(撮影・浅水友輝)
日大のクロスカントリーコースで練習するドゥング(撮影・浅水友輝)

4月から4人部屋での寮生活をスタートさせた。人生初の満員電車、片道1時間の通学にも慣れ「体のケアの授業とか勉強を頑張っています」と学生生活は順調だ。17年10月に母国に14歳~17歳のジュニア層を集めた陸上チームを立ち上げており、練習メニューづくりなど指導者的な面も両立している。大学で学んでいる専門的な知識が役立つ日も近い。

チームは1月の箱根駅伝で総合14位。今季も予選会からの出場になる。高信清人主務(3年)は「(ドゥングは)ストイックで体調管理1つとっても行動で示してくれている」。寮のバイキング形式の食事で油分を控えるなどの姿勢が、チームに良い効果をもたらしている。

昨年、両親に家を購入した。8月には、ケニア在住の20代女性との結婚も控えている。来日時に掲げた夢を1つずつかなえてきた23歳は「チャンスをもらった。箱根駅伝で区間賞を取りたい」。紺地にNのユニホームに身を包み、あこがれの箱根路を目指す。【浅水友輝】

◆チャールズ・ドゥング 1996年2月20日、ケニア生まれ。実家は首都ナイロビから150キロ離れたオカラウにある。好きな日本語は「頑張ります」、好物はウナギ。音楽鑑賞が趣味で西野カナ「Best Friend」はカラオケでも歌うお気に入りの曲。自己記録は5000メートル13分25秒32、1万メートル27分57秒36、ハーフマラソン1時間2分23秒。169センチ、52キロ。

◆日大と箱根駅伝 過去12度総合優勝も、ここ10年は出場8度で次年度シード権獲得(10位以内)は2度、12、18年は出場を逃している。今年1月は2区のケニア人留学生ワンブィ(現NTT西日本)が区間歴代2位で一時4位まで順位を上げたが最終順位は14位。来年の出場権を獲得するには10月26日の予選会(東京・立川)を突破する必要がある。

◆箱根駅伝の出場資格 93年に年齢制限(27歳以下)がなくなり、関東学連所属男子で予選会も含め出場4回未満。外国人留学生は予選会、本戦ともにチームで1人。アフリカ系留学生は過去8大学計25人が出場も、実業団経由選手は異例。実業団経由では25歳で駒大に入学して3年連続出場の大八木弘明監督(4年時は年齢制限)、29歳で東京国際大に入学して30歳で初出場の渡辺和也(3年)らがいる。

(2019年6月3日、ニッカンスポーツ・コム掲載)