生理の時は運動してはいけないのか
競泳は、日頃から男女一緒のプールで練習するため「自然と男子が、女子の体のことを理解するような環境にあった」と説明する。体調については、男性コーチであっても逐一報告。伊藤さんは、生理前になると情緒不安定になる月経前症候群を抱えていたが、周囲の理解もあって乗り越えられた。
一方で、いまだ「生理のときは運動をしてはいけない」と思っている指導者や選手がいるのも事実。「月に1度訪れる生理の時期に練習しなかったら、アスリートとして戦えない」。もちろん、さまざまなケースや個人差もあるが、間違った認識のままでいたり、最新の情報がアップデートされない状況に危機感を抱いている。
特に、「中学生のダイエットは、将来の卵巣リスクを高めるのでやってはならない」と声を大にする。体重管理が厳しい審美系競技などの選手は「エネルギー量は少なくても栄養価の高いものをとるべき」と、いくつかのメニューを教えてくれた。伊藤さん自身が実際に作っているものだ。
<伊藤華英さんおすすめメニュー>
*●栄養価の高い食材を利用*
・スーパーフードを利用。キヌアなどを混ぜて雑穀米に。
・ソバの実をゆでてお粥風に
・ギリシャヨーグルトにふやかしたチアシードを混ぜ、ハチミツをかける
・スーパー野菜「ビーツ」を使ったリゾットやスープ
*●部位や調理法に注意*
・肉は赤身を選ぶ。低脂質で貧血予防
・栄養素を失わないコールドプレスジュースやスムージーで野菜をとる
・菓子パンなどエネルギー量の高いものをやめる
現役時代は食事に苦労。引退後はさまざまな勉強をして、スポーツ界にフィードバックしている伊藤さん。若い世代のために、女子アスリートを取り巻く問題について、今後も発信し続ける。
【アスレシピ編集部・飯田みさ代】
◆伊藤華英(いとう・はなえ) 1985年(昭60)1月18日、埼玉県大宮市(現さいたま市)生まれ。東京成徳大中-東京成徳大高-日大。背泳ぎ選手として活躍。世界選手権は01年から4大会連続で入賞し、08年北京オリンピック100m8位。左膝痛などから10年に自由形に転向し、12年ロンドンオリンピックに出場した。同年の国体後に引退し、早大学術院-順大大学院。現在は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のメンバーとして活動。日大非常勤講師も務める。