<トップアスリートの食事:伊藤華英さん>

競泳背泳ぎ、自由形で北京、ロンドンと2度のオリンピックに出場した伊藤華英さん(33)は現在、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会として活動する傍ら、母校日大の非常勤講師として指導もしている。

2015年のジュニアオリンピックカップで、記念撮影する伊藤さん(左)と池江璃花子
2015年のジュニアオリンピックカップで、記念撮影する伊藤さん(左)と池江璃花子

そんな中、女性アスリートに感じているのは、女性であることの自覚のなさ、自分を知らない選手が多いこと。「強くなったとしても、男性になるわけじゃない。でも、錯覚してしまうのか、女性を捨ててしまう選手がいる」と神妙な表情を見せる。

婦人科へ行くことの抵抗感を捨てて

トレーニング量に対し、エネルギー摂取量が足りず、運動性無月経になっている10代女子選手がいれば、伊藤さんは「すぐに婦人科で診てもらいなさい」と伝えるが、そもそも「婦人科」へ行くことへの抵抗感がある選手は少なくない。

無月経が長期になれば、エストロゲンという女性ホルモンが分泌されないため骨がもろくなり、選手生命にも影響する。しかし、「生理がない方が楽」「現役のうちは生理はなくていい」「生理がなくなって一人前」などと思い込み、放置してしまう選手もいるという。その末、子どもが欲しいときに取り返しのつかない体になることもある。

女性アスリートの問題を熱を込めて話す伊藤さん
女性アスリートの問題を熱を込めて話す伊藤さん

低容量ピルも上手に使って

競技者として強くなるには、人間として自立することが重要。「自立するには、自分を知ること。自分が女性であることに向き合うことが大切」と伊藤さんは力を込める。

まず、体組成や食事のデータとともに基礎体温と心身の変化など、体の状態や周期を記録すること。月経異常がある場合、または試合日に最高のコンディションで臨めるよう生理の時期を調整したい場合は、婦人科で処方される低容量ピルの利用をすすめる。ドーピング検査にも問題なく、副作用も少ない。「そういった相談ができ、知識を得るためにも、信頼できる婦人科など専門の機関を使って欲しい」と言葉に熱を込めた。

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