<国学院久我山ラグビー部の食事サポート:上>

 全国高校ラグビー選手権が27日、大阪・花園で開幕する。2大会ぶりに出場する国学院久我山(東京第2)の3年生31人は、この2年間、アスレシピでコラムを執筆する管理栄養士・石村智子さん(56)のサポートを受け、全国で勝つための体作りをしてきた。

東京第2地区を制し喜ぶ国学院久我山の選手たち(撮影・野上伸悟)
東京第2地区を制し喜ぶ国学院久我山の選手たち(撮影・野上伸悟)

 中心となったのは母たちだ。「チーム久我山 アスリートキッチン2015」の名を掲げ、約3カ月に1度、石村さんを招いて勉強会を開催。その時期に沿ったテーマを決め、座学や調理講習を織り交ぜながら、ラグビー選手に必要な栄養素や食事の知識を重ね、毎日の食事作りに生かしてきた。

 コンタクトプレーが連続するラグビーは、特に消耗の激しいチーム競技。チーム全体がフィジカルを強化し、レベルアップしなければ、勝つことはできない。

 昨年、一昨年は地区大会決勝で引き分け、両校優勝となり、昨年は抽選で涙を飲んだ国学院久我山だったが、今年は決勝で5トライを奪い、29-5と東京に快勝。人工芝の張り替えで11月初旬まで約半年間、十分にグラウンドを使えないという不利な環境をものともせず、肉体の強さと総合力で上回った。

国学院久我山対東京 前半18分、相手タックルをかわしトライを決める国学院久我山WTB槙
国学院久我山対東京 前半18分、相手タックルをかわしトライを決める国学院久我山WTB槙

 選手の体作りを支えたのは、母が作る毎日の食事。選手もしっかり食べて期待にこたえた。決勝をスタンドで観戦した石村さんは「この日のために選手とお母さんたちは頑張ってきました。長期にわたってサポートさせていただいたことにより、お母さま方の食事サポート実践力が身に付いたのだと思います」と喜びもひとしおだった。

国学院久我山対東京 後半6分、右サイドを走った国学院久我山WTB衣笠は、1度はタックルに倒れながらも再び立ち上がりトライを決める
国学院久我山対東京 後半6分、右サイドを走った国学院久我山WTB衣笠は、1度はタックルに倒れながらも再び立ち上がりトライを決める

 全国大会でBシードの国学院久我山は30日、高鍋(宮崎)と国学院栃木(栃木)の勝者と初戦を戦う。勝てば1月1日、同じくBシードの佐賀工(佐賀)と対戦する可能性が高い。

 ここ数年、高校ラグビー界は“西高東低”で、過去優勝5回の実績を誇る国学院久我山も97年を最後に優勝から遠ざかっている。NO.8大石康太主将(3年)は「強いチームに対して、簡単に勝てるとは思っていない。1戦1戦大切に、このチームでどこまでできるか、チャレンジしたい」と静かに闘志を燃やす。

 勝ち進めば、同時に宿舎での生活も長くなる。食事内容も気にかかるが、そこは母たちの出番だ。父母会主体で初の試みとして、宿舎の献立を事前に教えてもらい、管理栄養士の指導の下、内容を調整してもらうという。「宿舎の方の協力があってできること。万全の体制で子どもたちを送り出したい」と大石の母則子さん(48)は、大会期間中の食事の不安がなくなったと笑顔を見せた。

 いまや「アスリートキッチン」は下級生の母たちにも引き継がれ、チームの新たな伝統として築かれている。25日にチームは大阪入り。母たちはやれることはすべてやり、そして選手たちを力強く送り出すつもりだ。強力な援軍を持つ国学院久我山、その戦いぶりに注目だ。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】

◆国学院久我山ラグビー部 1948年創部69年目。花園出場は2大会ぶり41度目。優勝5回(75、78、82、86、97年)。今年から中高一貫監督として、土屋謙太郎監督(55)が指揮。部訓は「自覚・誇り・努力」。元日本代表選手を多数輩出。