この夏の日本クラブユースサッカー選手権(U18)で、初めて決勝トーナメント(16チーム)に進出したFC町田ゼルビアユース。躍進の一因は、2年前に始まった食事改革にある。

 現主力の高校3年生がジュニアユースからユースへと上がった2015年の9月、クラブが運営する食堂「ゼルビア×キッチン」がオープンした。ジュニアユースとユースの選手は練習後、練習場所から自転車で5分ほどのキッチンに移動し、栄養バランスの整った温かい食事をとるのが原則となっている。

ゼルビア×キッチンの前に立つFC町田ゼルビアユースの選手たち

 本橋孝則トレーナーによると、クラブの食事に関する取り組みは5年前からスタートしたものだという。「平日の練習の終了時間はユースが19時半、ジュニアユースが20時半。選手の中には自宅まで1時間以上かかる者もいるので、当初は弁当屋の弁当を手配して、練習後すぐに食べられるようにしました。ただ出来合いのものなので冷めていますし、ご飯の量も調整できない。そこから意見を出し合う中で『ゼルビア×キッチン』ができました」。

ご飯をよそう選手。合宿中は1食1キロのノルマが課されていた

 ジュニアユースから同クラブに所属するFWの鈴木直人も「体が大きくないのでご飯をたくさん食べなきゃいけなかったけれど、お弁当の頃はそれができなかった。今はキッチンでご飯をたくさん食べられるようになったのがうれしいです」と話す。

大盛りのご飯をおかわりする選手たち

ご飯700グラム、タンパク質多め

 90分間走り通しのサッカーにおいて、とにかく大事なのがエネルギー源となる炭水化物。クラブはキッチン側に「毎食700グラムのご飯が食べられるような献立にしてほしい」と要望を出している。また、トップチームに帯同する選手も出てくるユース世代は、強い体作りにもフォーカス。トップチームのスタッフからの要望を受けて、ジュニアユースと比べてタンパク質の量が多いメニュー構成となる。

食事中の選手たち

 取材日のメニューは、鶏の照り焼き丼、サバの塩焼き、サラダ、モズク、納豆、みそ汁。選手たちはまずは照り焼きで1杯目を食べ、サバと納豆で2杯目、3杯目のおかわりのご飯を食べていた。

取材日のメニューは鶏の照り焼き丼、サバの塩焼き、サラダ、モズク、納豆、みそ汁。暑い時期なので酢の物は欠かさない

 キッチン側は、前日に翌日の利用人数をクラブから聞いて献立を組み立てる。練習前の食事は炭水化物を多めにし、練習後は疲労回復できるフルーツをプラス、試合前なら消化のいいうどんにと工夫をこらす。仕入れ、メニュー考案から調理まで全てをこなす竹橋祐司店長は、チームの要望をフレキシブルに取り入れながら、バラエティに富んだ食事を選手たちに提供している。

ユニホームを着用したキッチンのスタッフ。左から4人目の男性が竹橋店長

 時には、選手たちのリクエストも受ける。「人数が少ない時はオムライスやラーメンにすることもありますね。チキンのトマト煮込みや、ご飯の厚さだけで10センチくらいになる巨大ドリアも人気メニューです」と教えてくれた。

筋肉量、持久力がアップ

 「キッチン育ち」の選手たちにはどのような変化が出たのか。本橋トレーナーは「弁当時代から比べると、体重と筋肉量が全体的に増えています。試合中や試合後に足がつる選手も圧倒的に減っています」と話し、ユースの竹中穣監督も「体に厚みが出てきたのは間違いないし、ゲームの終盤になっても明らかに足が止まらなくなりました」と続ける。

笑顔で食事をする選手たち

 高校から加入したDFの須藤友介は、中学時代まで食が細く白米が苦手だったが、現在はその重要性を認識し、努力して食べるようになった。入団時から体重は5キロ増。「まだまだ食べる量が少ないので、しっかり食べてトレーニングをしてフィジカルを向上させたい」と今後の抱負を話した。

 クラブユース選手権での大きな経験を手に、チームはシーズン後半に進んでいく。目指すはT2リーグ(高円宮杯U-18サッカーリーグ東京2部)への昇格と、10月から始まるJユースカップの上位進出。竹中監督が「追い込まれたときでもポジティブにクリアして行ける集団」と評する選手たちの活躍に期待したい。【青木美帆】

「子どものため、地域のための定食屋」がゼルビア×キッチンのコンセプト。一般の方も利用できる

  • 「ゼルビア×キッチン」はチーム関係者だけでなく一般の方も利用できる食堂。地元町田市の食材を豊富に取り入れた60種類以上のメニューを、リーズナブルでおいしく、栄養バランスを考えながらとれる憩いの場となっている。